【ブラックメタルの攻撃性と美学】その思想と表現を元音大生が解説。

はじめに

ブラックメタルは、その過激なサウンドと反社会的なイメージで知られる音楽ジャンルです。

ヘヴィメタルをルーツに持ちながらも、より暗く、攻撃的なサウンドと、独自の美学を確立しています。

この記事では、ブラックメタルの誕生、特徴的なサウンド、その思想、そして社会への影響について、深掘りしていきます。

ブラックメタルは、1980年代初頭にノルウェーで誕生しました。

ヴェノムやマーシフル・フェイトといったバンドがその起源を築き上げ、その後、数多くのバンドが誕生し、独自のスタイルを確立してきました。

サウンドの特徴:
- ディストーションを極限までかけたギターサウンド: ギターの音を歪ませ、非常に攻撃的なサウンドを作り出します。
- ブラストビートと呼ばれる高速なドラムパターン: 機械的な速さで叩きつけるようなドラムパターンは、楽曲に疾走感と激しさを与えます。
- 邪悪な雰囲気を醸し出すヴォーカル: 高い声で叫んだり、唸ったりするようなヴォーカルスタイルは、楽曲の雰囲気をさらにダークなものにします。
- 暗く重苦しい雰囲気の楽曲: メロディラインは少なく、全体的に暗く重苦しい雰囲気の楽曲が多いです。
歌詞の内容:
- 死、悪魔崇拝、反キリスト教: これらのテーマは、ブラックメタルの初期から重要な要素であり、多くの楽曲で取り上げられています。
- 自然崇拝: 自然の美しさと厳しさを崇拝し、人間中心主義を批判する思想も存在します。
- ニヒリズム: 人生は無意味であるという考えに基づいたニヒリズム的な思想も、ブラックメタルの歌詞にしばしば見られます。
- 社会に対する怒りや絶望: 社会の不平等や虚偽に対する怒り、絶望といった感情が、歌詞に反映されることもあります。

ブラックメタルの思想は、多面的であり、アーティストによって大きく異なります。

反キリスト教: キリスト教に対する反発や否定は、初期のブラックメタルにおいて重要なテーマでした。

教会への放火事件など、過激な行動に出るアーティストもいました。
サタニズム: 悪魔崇拝をテーマにした楽曲も多く、サタニズム的なイメージが強い音楽ジャンルとして捉えられてきました。
自然崇拝: 自然の美しさと厳しさを崇拝し、人間中心主義を批判する思想も存在します。

北欧の美しい自然を背景に活動するバンドも多く、自然との一体感を表現しています。
ニヒリズム: 人生は無意味であるという考えに基づいたニヒリズム的な思想も、ブラックメタルの歌詞にしばしば見られます。
個の解放: 社会の規範や常識から解放され、自己を表現したいという欲求も、ブラックメタルの根底にある思想の一つです。

ブラックメタルの美学は、その音楽だけでなく、ヴィジュアル面にも表れています。

ダークなイメージ: 黒を基調とした服装、屍体ペイント、逆十字など、ダークなイメージを強調するヴィジュアルが特徴です。
自然との一体感: 森や廃墟など、自然を背景にした写真やビデオが多く見られます。

自然の厳しさと美しさを表現することで、音楽の世界観をより深く表現しています。
反商業主義: メジャーレーベルを拒否し、アンダーグラウンドで活動するアーティストが多いです。

商業的な成功よりも、音楽的な純粋性を重視する傾向があります。

ブラックメタルは、その過激な表現から、社会から批判されることも少なくありません。

メディアによる歪んだ報道: ブラックメタルは、しばしばメディアによって過激な側面だけが強調され、誤解を生むことがあります。

特に、初期のノルウェーのブラックメタルシーンにおける事件は、ブラックメタル全体に対するネガティブなイメージを定着させてしまいました。
法的な問題: 教会への放火事件など、一部のアーティストによる過激な行動は、法的な問題に発展することもあります。
社会への影響: ブラックメタルは、一部の若者に強い影響を与える一方で、社会不安を煽るという批判もあります。

初期のブラックメタルは、ノルウェーを中心に発展しましたが、その後、世界中に広がり、様々なスタイルのブラックメタルが誕生しました。

メロディックブラックメタル: メロディックな要素を取り入れたブラックメタルで、より聴きやすいサウンドが特徴です。
アトモスフェリックブラックメタル: 雰囲気重視のブラックメタルで、自然の音や民族楽器を取り入れた荘厳なサウンドが特徴です。
ブラックメタルと他のジャンルの融合: ブラックメタルは、他の音楽ジャンルと融合し、新しいサウンドを生み出しています。

例えば、ブラックメタルとドゥームメタルを融合させた「ドゥームブラックメタル」や、ブラックメタルとポストロックを融合させた「ポストブラックメタル」などがあります。

ブラックメタルは、その攻撃的なサウンドとダークなイメージで、多くの人の心を捉えてきました。

しかし、ブラックメタルは単なる反社会的な音楽ではなく、多様な思想や美学を内包しています。

自然崇拝、ニヒリズム、個の解放など、様々なテーマがブラックメタルの音楽の中に表現されています。