はじめに
ロベルト・シューマンは、クラシック音楽界で多数の名曲を残したドイツの作曲家で、その音楽は時を超えて今なお世界中で愛され続けています。
ここでは元音大生の筆者が、前半は代表曲、後半は個人的な好みが入りまくりの名曲を、クラシック音楽初心者の方でも楽しめる楽曲に絞って紹介します。
ぜひ一度聴いてみてください!
言わずもがな…な名曲は、参考リンクを割愛させていただきます。(リンクだらけになってしまうので…)
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生い立ち
ロベルト・シューマンは、1810年にドイツのツヴィッカウで生まれました。幼い頃から文学と音楽の両方に深い関心を持ち、特に文学は彼の創作活動に大きな影響を与えました。彼は当初、ピアニストとしての道を志しますが、手の怪我によりその夢を断念せざるを得なくなります。この挫折が、彼を本格的に作曲へと向かわせるきっかけとなりました。
ピアニストから作曲家へ(~1840年頃)
ピアニストとしてのキャリアを諦めたシューマンは、作曲家として、そして音楽評論家として活動を始めます。彼は、当時の音楽界に蔓延していた保守的な風潮に反発し、新しい音楽のあり方を提唱しました。
この時期に書かれた作品は、彼の内面的な葛藤や、妻となるクララ・ヴィークへの熱烈な愛が反映された、情熱的でロマンティックな性格を持っています。彼はこの時期に、多くのピアノ曲を、またクララとの結婚後には「歌の年」と呼ばれるほど多くの歌曲を作曲しました。
謝肉祭 作品9
幻想曲 ハ長調 作品17
子供の情景 作品15
作曲家と指揮者として(1841年~1850年頃)
この時期、シューマンはオーケストラや室内楽の作曲にも積極的に取り組みました。彼は、指揮者としても活動を始め、ドレスデンやデュッセルドルフでその才能を発揮します。この時期の作品は、彼の内面的な世界だけでなく、より広い世界へと視点を広げた、円熟した様式を持っています。しかし、指揮者としての活動は、彼の繊細な性格には合わず、精神的な負担となりました。
交響曲第1番「春」
ピアノ協奏曲 イ短調
チェロ協奏曲 イ短調
晩年の苦悩と終焉(1851年~1856年)
晩年のシューマンは、精神的な病に苦しむようになり、幻聴や幻覚に悩まされました。彼はデュッセルドルフでの指揮活動を辞任し、創作活動もままならなくなります。しかし、その短い期間にこそ、彼の音楽はさらに内省的で、深い精神性を獲得しました。1854年、彼はライン川への投身自殺を試み、精神病院に収容されます。
そして、1856年、46歳の若さでその生涯を閉じました。彼の死後、彼の音楽は、後世の多くの作曲家たちに受け継がれていきました。
幻想小曲集 作品12
ゲーテの「ファウスト」からの情景
ヴァイオリン協奏曲
ここから、名曲をご紹介します。
ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
シューマンが作曲した唯一のピアノ協奏曲であり、ロマン派の協奏曲の代表作として広く知られています。この曲は、妻クララ・ヴィークのために作曲されたもので、従来の協奏曲が持つ技巧的な華やかさだけでなく、ピアノとオーケストラが対話するように、感情の交流を深く描いているのが特徴です。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、ピアノとオーケストラが一体となって織りなす、ロマンティックな歌心です。特に、冒頭のピアノによる力強い和音と、それに続くクラリネットの憂鬱な旋律は、聴く者を一瞬でシューマンの世界へと引き込みます。
そして、この曲全体を貫く、甘く、切ない主題が、様々な形で変奏されていきます。この協奏曲は、技巧的な華やかさよりも、ピアノとオーケストラの繊細な感情のやり取りに焦点を当てており、シューマンが持つ詩的な感性を存分に感じることができます。
謝肉祭 作品9
「謝肉祭」は、シューマンが作曲した最も有名なピアノ曲の一つです。この作品は、謝肉祭の仮面舞踏会の情景を描いた21の小品からなり、それぞれに「ピエロ」「ショパン」「エウゼビウス」「フロレスタン」といった、架空の人物や実在の人物の名前が付けられています。
特に、「エウゼビウス」と「フロレスタン」は、シューマンの持つ二つの対照的な性格を象徴しており、夢想的で内向的な「エウゼビウス」と、情熱的で外向的な「フロレスタン」が、作品全体を通して登場します。
おすすめポイント
この曲の魅力は、様々なキャラクターや情景が、短い小品によって生き生きと描かれている点です。それぞれの曲が持つ個性が非常に豊かで、聴く者をまるで仮面舞踏会の会場にいるかのような気分にさせてくれます。
また、作品全体を貫く「A-Es-C-H」(ドイツ語音名でA-E♭-C-B)という音形は、シューマンの故郷アシュ(Asch)と、妻クララの故郷ライプチヒを結ぶものであり、シューマンがこの曲に込めた、個人的な想いを感じることができます。
子供の情景 作品15
「子供の情景」は、シューマンが作曲したピアノ曲の中でも、最も有名で、多くの人々に愛されている作品です。この作品は、子供の頃の思い出を振り返る13の短い小品からなり、それぞれに「見知らぬ国々」「鬼ごっこ」「おねだり」といった、子供の情景を思わせる標題が付けられています。
おすすめポイント
この曲の魅力は、子供の心の世界を、繊細で美しい旋律で表現している点です。特に、第7曲「トロイメライ(夢)」は、シューマンの作品の中でも最も有名で、甘く、切ないメロディが、聴く者の心に深く染み渡ります。
この曲は、技巧的な難しさよりも、感情的な表現が重視されており、シューマンが持つ純粋で詩的な感性が凝縮されています。この作品を聴くと、誰しもが経験したことのある、子供の頃の懐かしい思い出が蘇ってくるでしょう。
幻想曲 ハ長調 作品17
この曲は、シューマンが妻となるクララへの熱烈な愛を込めて作曲した、3楽章からなる大規模なピアノ独奏曲です。ベートーヴェンの記念碑を建てるための寄付金を集める目的で書かれたため、随所にベートーヴェンへの敬意が示されています。特に、第一楽章の冒頭の旋律は、ベートーヴェンの歌曲集「遥かなる恋人に」の主題が引用されており、クララへのメッセージが隠されています。
おすすめポイント
この曲の魅力は、シューマンの情熱的な感情が、そのまま音楽になったかのような力強さです。第一楽章の激しく、情熱的な音楽は、クララへの抑えきれない愛を表現しているかのようです。
しかし、その中にも、夢想的で繊細な旋律が顔を出し、シューマンの持つ二面性が描かれています。この作品は、シューマンが音楽を通して、クララへの深い愛と、自身の内面的な世界を表現しようとした、彼の代表作であり、ロマン派のピアノ曲を語る上で欠かせない傑作です。
交響曲第1番 変ロ長調 作品38「春」
シューマンが作曲した4つの交響曲の中で、最も有名で、親しみやすい作品です。この曲は、彼が妻クララと結婚した翌年、1841年に作曲されました。春の訪れを喜び、希望に満ちた感情を表現したこの曲は、シューマンの人生の中で最も幸福だった時期を反映しています。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、春の訪れを祝うような、希望に満ちた明るい雰囲気です。冒頭のホルンが奏でるファンファーレは、まるで春の嵐を告げるかのような力強さを持っており、聴く者を一瞬で活気に満ちた世界へと引き込みます。
また、各楽章が持つ、伸びやかで美しい旋律は、シューマンの持つロマンティックな感性が存分に発揮されています。この交響曲は、シューマンの作品の中でも、比較的聴きやすく、彼の音楽が持つ明るく、希望に満ちた側面を味わうことができる傑作です。
ここから、好み入りまくりのおすすめ曲をご紹介します。
クライスレリアーナ 作品16
「クライスレリアーナ」は、ロベルト・シューマンが1838年に作曲したピアノ独奏曲で、8つの小品からなる組曲です。この曲集は、ドイツの作家E.T.A.ホフマンの作品に登場する、変わり者の楽長ヨハネス・クライスラーという架空の人物にインスピレーションを得て書かれました。シューマン自身が持つ二面性、つまり情熱的で外向的なフロレスタンと、夢想的で内向的なエウゼビウスの性格が、この曲集全体を通して深く描かれています。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、感情の振幅の大きさと、シューマンの内面的な葛藤が音楽によって表現されている点です。それぞれの小品は、まるで日記の断片のように、突如として感情が変化する予測不可能な音楽で構成されています。
例えば、激しく情熱的な部分の後に、憂鬱で静かな旋律が現れるなど、一見すると統一性のないように見えますが、全体としてはクライスラー(そしてシューマン自身)の精神的な肖像画を形成しています。この曲は、単なる美しい旋律の集合体ではなく、聴く者をシューマンの深く、複雑な内面世界へと引き込んでいく、ロマン派音楽の傑作です。
ピアノソナタ第3番 ヘ短調 作品14
シューマンが1835年に作曲した、全3曲のピアノソナタの中でも最も有名で、大規模な作品です。このソナタは、もともと「コンツェルト・サンズ・オルケストル」(管弦楽なしの協奏曲)と名付けられていたことからもわかるように、単なるソナタの枠を超えた、力強く、壮大なスケールを持っています。
また、シューマンは、この曲の中にベートーヴェンの交響曲第7番の主題を引用しており、彼が持つベートーヴェンへの深い敬意を感じさせます。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、ロマン派の協奏曲のような壮大さと、シューマンの内面的な情熱が融合している点です。ピアノがオーケストラのように響き、力強く、そして情熱的に歌い上げます。特に、第2楽章の主題は、シューマンが後に「詩人の恋」という歌曲集で用いた旋律を思わせる、甘く、切ない旋律を持っています。
この楽章は、全体として情熱的なこのソナタの中で、聴く者に安らぎを与えてくれます。このソナタは、シューマンの持つ作曲家としての才能と、ロマン派のピアノ音楽が持つ可能性を最大限に引き出した、彼の代表作の一つです。
まとめ
シューマンの音楽は、世代を超えて多くの人々に愛されています。一度は聴いたことがあるメロディーも出てくると思いますが、ぜひ最初から最後まで通して聴いてみてください。
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