はじめに
ヨハン・セバスチャン・バッハは、クラシック音楽界で「音楽の父」として知られ、その音楽は時を超えて今なお世界中で愛され続けています。
ここでは元音大生の筆者が、前半は代表曲、後半は個人的な好みが入りまくりの名曲を、クラシック音楽初心者の方でも楽しめる楽曲に絞って紹介します。
ぜひ一度聴いてみてください!
言わずもがな…な名曲は、参考リンクを割愛させていただきます。(リンクだらけになってしまうので…)
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生い立ち
ヨハン・ゼバスティアン・バッハは、1685年にドイツのアイゼナハに生まれました。彼の家系は代々音楽家を輩出しており、幼い頃から音楽に囲まれて育ちました。
彼はオルガニスト、ヴァイオリニスト、そして作曲家として、ドイツ各地の宮廷や教会に仕え、生涯を通じて音楽に深く向き合いました。彼の創作活動は、仕えた場所によって、大きく3つの時期に分けることができます。
宮廷オルガニストの時代(1708年~1717年)
ヴァイマール公の宮廷オルガニストとして仕えたこの時期、バッハは特にオルガン曲の作曲に力を注ぎました。彼は、当時のドイツのオルガン音楽の伝統を深く学び、それを自身の技術と結びつけて、荘厳で技巧的なフーガや前奏曲を数多く生み出しました。この時期の作品には、まだ若々しい情熱と、オルガンという楽器への深い理解が感じられます。
トッカータとフーガ ニ短調
パッサカリアとフーガ ハ短調
オルガン小曲集
宮廷楽長と教育者としての時代(1717年~1723年)
ケーテン侯レオポルトに宮廷楽長として仕えたこの時期は、バッハの創作活動の中でも特に世俗音楽に焦点が当てられました。敬虔なプロテスタントであった侯は、教会音楽よりも器楽を好んだため、バッハは世俗的な協奏曲や組曲を数多く作曲しました。
この時期の作品には、バッハの洗練された技巧と、楽器の特性を深く理解した表現が見られます。また、彼は教育者としても熱心であり、鍵盤楽器を学ぶ子供たちのために、多くの教則的な作品も生み出しました。
ブランデンブルク協奏曲
無伴奏チェロ組曲
平均律クラヴィーア曲集第1巻
教会楽長と教育者としての時代(1723年~1750年)
ライプツィヒの聖トーマス教会楽長に就任したこの時期は、バッハの人生で最も長く、そして最も重要な期間でした。彼は、毎週の礼拝のために膨大な量の教会カンタータを作曲し、さらに大規模な合唱曲や受難曲も手掛けました。
この時期の作品は、彼の信仰心が深く反映されており、音楽を通じて神を賛美するという彼の人生の目的が凝縮されています。また、彼は晩年まで教育者として、音楽の奥義を追求し続けました。
マタイ受難曲
クリスマス・オラトリオ
ミサ曲 ロ短調
ここから、名曲をご紹介します。
無伴奏チェロ組曲
バッハがケーテン侯に仕えていた時期に作曲された、チェロ独奏のための傑作です。全部で6曲あり、それぞれが様々な舞曲の形式で構成されています。この作品は、チェロという単一の楽器で、和声や対位法、そして深い精神性を表現した、バッハの作曲技法の極致とも言える作品です。
長らく忘れられていましたが、パブロ・カザルスによって再評価され、現代ではチェロ奏者にとって最も重要なレパートリーとなっています。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、チェロという単一の楽器から、無限の響きと深みが引き出されている点です。それぞれの組曲は、プレリュード(前奏曲)に始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、ガヴォット、ブーレ、ジーグといった様々な舞曲で構成されています。
特に、第三番のプレリュードの開放的な響きや、第一番の有名なプレリュードの流れるような旋律は、聴く者に静かな感動を与えてくれます。この組曲を聴くと、バッハが持つ音楽への深い洞察と、単一の楽器の中に広大な世界を構築する才能を強く感じ取ることができるでしょう。
平均律クラヴィーア曲集
バッハが鍵盤楽器のために作曲した、2巻からなる教則的な作品集です。第1巻はケーテンで、第2巻はライプツィヒで作曲されました。この曲集は、長調と短調、それぞれ24の調性を網羅しており、前奏曲とフーガのペアで構成されています。これは、当時の「平均律」という新しい調律法が、全ての調で演奏可能であることを示すためのものでした。
おすすめポイント
この曲集の最大の魅力は、バッハが持つ形式的な完璧さと、表現の豊かさが見事に融合している点です。フーガは、一つの主題が複数の声部によって複雑に絡み合いながら展開していく厳格な形式ですが、バッハはこれを、まるで生きているかのように生き生きと、そして感情豊かに描き出しています。
それぞれの曲が持つ個性は多様で、荘厳なものから、軽快なもの、そして深い悲しみを帯びたものまで、様々な感情を表現しています。この曲集を聴くと、バッハが音楽という芸術を通して、世界の多様性と調和を見事に表現していることがわかるでしょう。
トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565
バッハのオルガン曲の中でも、最も有名で、多くの人々に親しまれている作品です。この曲は、映画やテレビなどで頻繁に使用され、バッハの代名詞とも言える存在です。力強く、そして劇的なトッカータと、その後に続く、荘厳で緻密なフーガが、聴く者の心を強く掴みます。
おすすめポイント
この曲の魅力は、圧倒的な迫力と、バッハの巧みな構成力です。冒頭の雷鳴のようなトッカータは、聴く者を一瞬でバッハの世界へと引き込みます。そして、その後に続くフーガは、バッハが持つ対位法の技術が凝縮されており、複雑でありながらも、聴く者を飽きさせない巧みな展開が繰り広げられます。
この曲を聴くと、バッハがオルガンという楽器を、まるでオーケストラのように自在に操る才能を持っていたことがわかるでしょう。
ブランデンブルク協奏曲
バッハがケーテンに仕えていた時期に作曲された、全6曲からなる協奏曲集です。この曲集は、ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈されたため、「ブランデンブルク協奏曲」と呼ばれています。
各曲が異なる楽器編成で書かれており、バロック時代の楽器の魅力を最大限に引き出しています。
おすすめポイント
この曲集の最大の魅力は、バロック時代の楽器の音色と、バッハの独創的な編成です。例えば、第2番では、トランペット、リコーダー、オーボエ、ヴァイオリンがソロ楽器として共演するという、非常に珍しい編成が使われています。
また、第5番では、チェンバロがソロ楽器として、華やかな技巧を披露します。この協奏曲集は、バロック音楽の持つ躍動感と、バッハの豊かな音楽的アイデアを存分に楽しむことができる傑作です。
マタイ受難曲
バッハがライプツィヒの聖トーマス教会楽長時代に作曲した、キリストの受難を描いた大規模な合唱曲です。この曲は、二つのオーケストラ、二つの合唱団、そして独唱者によって演奏され、バッハの教会音楽の集大成ともいえる作品です。深い精神性と、壮大なスケールを持つこの曲は、バッハの信仰心を最も強く感じさせる作品の一つです。
おすすめポイント
この曲の魅力は、音楽を通して表現される、深い悲しみと信仰心です。バッハは、聖書の物語を音楽によって劇的に描き出し、聴く者をキリストの受難の物語へと引き込んでいきます。特に、有名な合唱曲「憐れみたまえ、わが神よ」は、深い悲しみと、神への祈りが美しく表現されており、聴く者の心を強く揺さぶります。
この作品は、バッハの音楽家としての技術だけでなく、彼の人間的な深さと、信仰への真摯な姿勢を感じることができるでしょう。
ここから、好み入りまくりのおすすめ曲をご紹介します。
ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 BWV 1052
バッハがライプツィヒ時代に作曲した、チェンバロ独奏のための協奏曲です。この曲は、バッハの数ある協奏曲の中でも特に有名で、力強く、劇的な雰囲気を持ちます。
元々はヴァイオリン協奏曲として作曲されたと考えられており、その後、チェンバロ協奏曲へと編曲されました。バッハは、この曲で、協奏曲という形式におけるソロ楽器とオーケストラの関係性を新たな次元へと高めました。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、チェンバロがオーケストラと対等に渡り合う、力強く、情熱的な音楽です。特に、冒頭の第一楽章は、力強いオーケストラのユニゾンで始まり、その後にチェンバロが、技巧的で情熱的なパッセージを繰り広げます。この楽章は、バッハの音楽が持つ厳格な形式美の中に、劇的な感情が秘められていることを示しています。
また、第二楽章の深く内省的な旋律は、聴く者の心に静かに語りかけてきます。この協奏曲は、バッハの音楽が持つ知的で形式的な美しさだけでなく、その中に秘められた情熱と力強さを感じさせてくれる傑作です。
イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
バッハが1735年に出版した「クラヴィーア練習曲集第2巻」に収められている、チェンバロ独奏のための作品です。この曲は、当時のイタリアで流行していた協奏曲の形式を、一台の鍵盤楽器で表現するという画期的な試みでした。オーケストラとソロ楽器が対話するように、音量や音色のコントラストを生み出し、バッハの天才的なアイデアと技術が凝縮されています。
おすすめポイント
この曲の最大の魅力は、一台の鍵盤楽器が、まるでオーケストラのように響く壮大な世界です。第1楽章では、冒頭にオーケストラ全体が演奏する「トゥッティ」を思わせる力強い和音が鳴り響き、その後にソロ楽器が軽快に登場します。この対比は、実際の協奏曲さながらの臨場感を生み出しています。
また、第2楽章は、美しい旋律が歌い上げられるカンタービレ(歌うように)な楽章で、バッハの深い抒情性が感じられます。この曲は、バッハが持つ形式への深い理解と、それを独創的に応用する能力を証明する傑作であり、鍵盤楽器のレパートリーの中でも重要な位置を占める一曲です。
まとめ
バッハの音楽は、世代を超えて多くの人々に愛されています。一度は聴いたことがあるメロディーも出てくると思いますが、ぜひ最初から最後まで通して聴いてみてください。
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